その男、小悪魔につき。【停滞中】
「本当のことですから。良いですか?彩月先輩は俺の……」
千尋くんはそこまで言うと、私の顎から手を離して立ち上がった。
「とりあえず軽くシャワー浴びてきて。その間に色々準備しときますから」
「あ、はい。」
何を言おうとしたんだろう。
気になったけど何となく聞いてはいけない気がして、私は素直に頷いた。
「あっ、千尋くん!」
私も立ち上がって声をかけると、千尋くんは振り向いた。
「あの、ありがとうねっ」
「……いえ」
お礼を言うと、すぐに前を向いてリビングに行ってしまった。
……今のは、少し照れてるのかな?
ふふっ、と私しか知らない千尋くんがいる気がして笑みが溢れる。
熱と、その得たいの知れない感情が混ざって、いてもたってもいられなくなりシャワールームに駆け込んだ。
「……赤い」
鏡に映るのは頬を染めた私。
はぁ。どれだけ振り回されているんだろう。私。