その男、小悪魔につき。【停滞中】
千尋くんは私の背中をあやすようにポンポンして安心させる。
「私のね、大切な人がどこかに行っちゃう夢」
すると千尋くんはスッと体を離して、顔を俯かせた。
揺れる前髪の先に下唇を噛んでいるのが見える。
千尋くん……?
何だかあの、駅で見た表情と似ているような……
「どうかした?」
問いかけると、首を振って私に微笑んだ。
「彩月さんは俺に話したからもう大丈夫ですよ。大体大切な人がそんな簡単に離れていくわけないじゃないですか」
「うん…」
そして再び千尋くんの胸に抱かれる様にして眠りにつく。
しかし私はさっきの夢のことより、千尋くんのことが気になって中々寝付けなかった。