その男、小悪魔につき。【停滞中】
いってらっしゃいませ。
何だか良い匂い……
スンスンと布団から顔を出して匂いを嗅ぐと、誰かが吹き出した声が聞こえた。
「ぷっ、彩月さん……」
「へ?」
起き上がると千尋くんがお盆を持って喉を鳴らして笑っていた。
「寝惚けているのにスープの匂い嗅いでいるなんて……」
「もうっ」
ベッドに座った千尋くんの肩を叩くと、目を細めて笑っていた。
夜中に見た雰囲気はすっかり払拭されていて、少し拍子抜けしたような。
って私はどんだけ食い意地張ってるんだか。
「コーンポタージュです。まだあんまり食べられないと思って」
「ありがとう、ってこれ作ったの?」
「?はい」
コーンポタージュって家で作れるもんなのか?
仕事ばっかりであんまり自炊しないからなぁ……私。
「いただきま……あれ?スーツ?」
「あぁ、そろそろ出ようかなって。」
「えっ、じゃあ私もすぐ」
「駄目」
立ち上がろうとすると、そのまま千尋くんに肩を掴まれた。
「今日は一日休んでてください?」