その男、小悪魔につき。【停滞中】
綺麗なブラウンの瞳で見つめられ、私は思わず口を紡いだ。
すると千尋くんは、ふっと微笑みティッシュで唇のあたりを拭いた。
「すみません。口紅がはみ出てたので…。」
と顔色一つ変えずに言い、キッチンへ戻っていく千尋の後ろ姿を見て言葉を失う。
「…………。」
「彩月さん?」
「……い、言ってよ!私に!そしたら自分でやるから!」
「くくっ、すいません…… 」
口元に手をあて、無邪気に笑いながら近付いてくる千尋くん。
こ、こいつ明らかに女慣れしていやがる……
何だか生け簀かなくて私は手をぐっと握った。
「はぁ?!恥ずかしくなんか……」
「でも顔、赤いですよ?」