その男、小悪魔につき。【停滞中】
「どうするつもり、なんですかね?」
「……何その微妙な返し。」
上手くはぐらかされて、スッと肩の力が抜ける。
まさに手玉に取られてる感じ
千尋くんは確信のある答えを言ってくれたことが無い。
笑顔を向けてくれて、笑わせてくれて楽しませてくれて、私をドキドキさせる。
でもどこか冷めていて、歩み寄ろうとすることは出来ない。
……何か悔しい。
悶々と一人考えていると、タクシーが止まった。
「お客さん、着きましたよ」
「あ、はいっ」
起き上がって鞄の中から財布を出そうとすると、千尋くんが横で支払いを済ませていた。
「上まで送っていきます」
私の手を握ってタクシーから降りると、パラパラと雨が降ってきた。
「あ、雨!早く入ろう」