その男、小悪魔につき。【停滞中】
「そ、それにしても車持ってるなんてすごいね!」
楽しもうと決めて話題作りにそう言うと、どうしてか千尋くんは苦笑してしまった。
「大学の時はバイトばっかしてたけど、お金使わなかったから……ってこの話、彩月さん乗った時もしましたよ?」
「えっ……あ、ちょっと寝惚けてたのかも?アハハ」
私の空笑いに千尋くんは少し微笑んで、シートベルトを外し助手席の扉へ回ってくれた。
「話は後で聞きますから、とりあえず今は何も考えずに楽しみましょうか」
千尋くん……
そうだよね!せっかくの休日デー……
「あのさ、これって……その…いわゆる…デ、」
「デ?」
「だからっ、世間一般的に言うと……」
「ふふっ、すみません。そうですね、“デート”なんじゃないですか?」
あ、コイツ言いたい事わかってて……
「……意地悪だなぁ」
「彩月さんが可愛いのがいけないんでしょ?」