その男、小悪魔につき。【停滞中】
「お疲れ様でした」
ハイ、と缶ジュースをベンチに座っている私に差し出した。
「ありがとう……」
先程のお化け屋敷で叫びすぎたせいか、喉が痛くなっている。
そして隣に腰を下ろした千尋くんのTシャツの裾が伸びていることに気付いた。
「あっ、これまさか……ごめん!」
「え?あぁ。大丈夫ですよ。それにしてもお化け屋敷の中での彩月さん、凄かったなぁ。……大胆で」
「へっ!?何がっ」
「とても会社では見せてくれないような表情も見れましたしね?」
「それはっ……」
あぁ、もう本当に恥ずかしい。
確かにさっきまでの私の千尋くんへのくっ付きぷりは大変なものだったけど……
思い出すともっと恥ずかしくなって私は俯いた。
「本当にごめん。Tシャツも引っ張っちゃうし、千尋くんにはいつも醜態をお見せしちゃって……」
すると膝の上で握っていた缶ジュースをヒョイ、と取られた。
「ふふっ、俺は彩月の色んな面が見られて逆にラッキーだと思ってますよ?ほら、早く飲んで次行きましょう」
ラッキーって……
本当、千尋くんには敵わないや。
「ありがとっ!ちょっと待っててね」