その男、小悪魔につき。【停滞中】
#006
千尋side
「彩月さんっ、すみません。待ちました?」
もうすぐマンションに着くと連絡しておくと、既に彩月さんはエントランスで待っていた。
「ううんっ、私も今来たとこだから」
そう言って笑顔を見せるが、どこかいつもと違う。
やっぱ昨夜の手紙がこたえてるのか?
少しでも和らげてあげたいと思い、昨日は勢いで誘ってしまった俺。
でも年上のはずなのに彩月さんを見ていると、どうしても守ってあげたいと思ってしまう。
「すごいね!大学出たてで車持ってるなんて」
助手席に座っている彩月さんに視線を移すと、
わざと明るく振る舞っているのが見え見えで笑ってしまった。
「千尋くん?」
「いや、俺バイトしてる割に特にお金使わなかったからそれで」
やっぱりあの男の事が引っ掛かってるんだろう。