その男、小悪魔につき。【停滞中】
「わぁ……綺麗だね」
結局空いていたこともあり、観覧車に乗ると夜の町がキラキラして見える。
何か朝はモヤモヤしてたのにスッキリしたなぁ……。
ふっと前を向くと向かい側に座っている千尋くんと目が合う。
そのまま見つめると、千尋くんは柔らかく微笑んだ。
「ん?何ですか?」
……お礼、言わなくちゃ。
「千尋くん今日はありがとう。実を言うと織田さんからね、招待状来たりして凹んでたんだけど、色々振り回しちゃったけど千尋くんのおかげで多分大丈夫に」
「はい、ストップ」
話を遮ると千尋くんは私の隣に座った。
さっきよりだいぶ距離が近くなり、私の目には千尋くんと窓の向こうの夜景しか見えなくなった。
「千尋くん?」
「……俺、初めて彩月さんと会った時“バカだな~”って思ってました」