その男、小悪魔につき。【停滞中】
え?バカ……?
でも確かにあの晩は相当酔ってて酷いことしたんだろうなぁ。
あぁ、思い出すだけで恥ずかしい……
「……」
「ふふっ、だって多分誰にも打ち明けてないような事を見ず知らずの大学生に話したんですよ?酔って頬赤くして涙ポロポロ流しながら……。でもそれって俺くらいじゃないと話せなかったんじゃないかなって」
「……」
「きっと彩月さんの事だから周りには心配かけたくなくて気丈に振る舞っていたんじゃないですか?」
図星だ……
織田さんは取引相手の人だったし、相手の夏奈子は元々私の後輩だったから会社の人にも付き合っていたのはバレていた。
だから別れた時も夏奈子が寿退社した時も、みんなが気を使ってくれるのが逆に怖くて、本心は笑って誤魔化していた。
「……」
「泣いたり笑ったり忙しい人だなと思ったけど、あの時の彩月さん可愛かったなぁ」
「なっ……!大人をからかうなっ」
このっ、と千尋くんの肩を叩こうとするとそのまま手首を掴まれ引き寄せられた。
そして腰に手を回され、ポンポンとあやすように撫でられる。
「あと“こんな人逃すなんて馬鹿な男もいるもんだ”……そう思いました」