足跡が其処に
花びらの雨の中

一日だけ許された
貴方が檻を出られる日
桜が満開の空だった

流行の服を着て
嬉しそうに隣を歩く貴方は
何所にでも居る普通の少年に見えるのだろう

普通になれたらと
普通になりたいと
願う貴方の願いは儚い

行き着いたのは私たちが出会った始まりの場所
夜桜と月が印象的なあの公園で
また私たちは巡り会う

不意に貴方は駆け出して
私の前に立ち
私の目をじっと見つめて

「生きて」

呟いた

「生きて」

叫んだ

「生きて」

悲痛な叫びだった

「生きたい」

貴方の願いだった

桜が舞い散る春の一日
私が貴方から願いを託された日
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