足跡が其処に
最後まで言えなくて

泣きたくなるほどの優しいメロディーを
貴方は何時も病室の片隅で
小さな子供たちを勇気付けるように
優しく優しく歌っていた

不安に泣き出す子供をあやしては
大丈夫だよと半分自分に言い聞かせるように
暖かく儚いメロディーを奏でては
誰かに笑顔を与えて

自分を救うように
他人を救うように
一つ一つ言葉で紡ぐ
あの歌には

貴方の希望
貴方の絶望
そんな優しい歌

薄い青色のパジャマを着て
ベットに座りながら
窓の外の景色を
何時までも何時までも
飽きることなく眺める貴方の横顔

最後まで言えなかったけれど
とてもとても
好きだったよ
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