足跡が其処に
出会いも別れも

何時も貴方の部屋に遊びに来ていた
あの子が此処を去ることを聞いた

良かったねと貴方は言った
おめでとうと私は続けた
あの子は寂しそうにありがとうと言った

此処は一種の檻だと貴方が言ったのを覚えてる
それは何かと戦いながら
苦しくても抜け出せない
何重にも鍵をかけられた檻だと

其処からあの子は抜け出せるんだと
本当に嬉しそうに笑ったのは
あの子が花束を持って
バイバイと言うまでだった

寂しそうに笑った後
小さなあの子の体を抱きしめて
生きてと呟いた貴方の姿と
その言葉に涙を溜めたあの子の姿

此処では何人もの人と貴方が出会い
貴方よりも先に何人もの人が此処を出て行くことを
改めて知ってしまった

私たちに手を振って
嬉しそうに
寂しそうに
歩いていくあの子の姿を

私たちはずっと見ていた
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