異国のシンデレラ
別れの予感
ここは快適だったけど延泊は…しない。出来るわけない…彼との接点をこれ以上持てないから。
「もうホテルの予約はしてあるので…次はどんなところか、今から楽しみです」
嘘ばっかり…少しでも遠くにとウェールズを選んだ。あの辺りにはお城とか…観光名所もあるし、退屈しないと思う。
彼と付き合うなんて出来るわけがない。だって…世界は違いすぎるしイギリスに住んでる彼と日本の私と……ううん…真に受けちゃいけないよね。
「そう、ですか…ならばチェックアウトする日にはそのホテルまで送りがてら、また道中観光でもしよう」
「…ええ」
彼が動揺したように見えたのは私の気のせい…そうに決まってる。また紳士的に部屋まで送ってくれて、額におやすみと囁きながらキスされて…どうしてこんなに私は囚われるんだろう…。
翌日はショッピングがてら観劇に行く事になった。ウェールズの方はもうかなり寒いから、暖かいコートが必要だって。
「いえ、そんなの…」
「私に贈らせて欲しい」
「でも…」
「どんな寒さの中でも、いつも私の想いがクルミを暖かく包んでいられるように…」
そんな風に言われたら私……断れなくなる。
「ああ…君には淡い色がよく似合う」
彼は私に淡いピンクでファーの付いたコートをプレゼントしてくれた。見えない裏地はピンクと白と赤のチェックですごく可愛い。
「ありがとう……ウィリアム…」
「気に入ったかい?」
「ええ、寒くなるのが楽しみになるくらい」
「よかった…君の笑顔が見られただけで、私はイギリス一の果報者だ」
「大袈裟です…」
「君といられる事以上の至福など…存在しない。私にとって君は……」
じっと見つめられて恥ずかしいのに、碧眼から目を反らせない。人の往来もあるモールの中なのに…。
「私にとって君は……私史上最も愛しい人だ」
「っ」
「もっと傍で同じ時間を過ごし、もっと君を知りたい」
彼の言葉はいつも甘く優しい…期待しないようにしていても、いつの間にか自惚れてしまってる。彼に大事に想われてると確信してる私がいて…。
「クルミ…君が…愛しくてならない」
「ぁ……」
「こうしてエスコートさせてもらえるのは、少なくとも嫌われてはいないと…思ってもいいのか?」
そんな聞き方…狡い…嫌いなわけないのに…。
「嫌っているわけでは…少し…戸惑ってるだけですから…」
「戸惑う…?」
「…はぃ……そんな風に言われた事はないので…慣れなくて」
「ならば慣れなくていい…こうして恥ずかしがる君も…とても可愛らしくていい」
さらっとこんな事が言えちゃうなんて…お国柄の違いかな?この往来のあるモールで平然とそんな風に出来ちゃうんだもん。
「さて…もう少し洋服でも見に行くかい?」
「ええ」
差し出された腕に少し恥ずかしくなりながらも掴まる。ゆっくりと私に合わせて歩いてくれる気遣いが嬉しい。
彼の告白からランチもディナーも私が勝手にぎくしゃくしてただけで、今日はそれが嘘みたいに和やかに楽しく過ごせた。
ランチの後にはシェークスピアのお気に召すままを観た。時折、彼と囁きながら笑ったり…シンデレラの魔法みたいに、夢のような時間を過ごせた。
それも明日一日で終わり…魔法はいつか解けてなくなるものだから…。
部屋に戻ってから、少しずつ片付けを始める。明日は銀行にも行かなきゃ。
スーツケースに一通り荷物を詰めて、ランドリーサービスから戻ったものも確認して詰める。明日一日は一生残るような思い出になればいい…そう願いながら、私はベッドに横になった――。
「もうホテルの予約はしてあるので…次はどんなところか、今から楽しみです」
嘘ばっかり…少しでも遠くにとウェールズを選んだ。あの辺りにはお城とか…観光名所もあるし、退屈しないと思う。
彼と付き合うなんて出来るわけがない。だって…世界は違いすぎるしイギリスに住んでる彼と日本の私と……ううん…真に受けちゃいけないよね。
「そう、ですか…ならばチェックアウトする日にはそのホテルまで送りがてら、また道中観光でもしよう」
「…ええ」
彼が動揺したように見えたのは私の気のせい…そうに決まってる。また紳士的に部屋まで送ってくれて、額におやすみと囁きながらキスされて…どうしてこんなに私は囚われるんだろう…。
翌日はショッピングがてら観劇に行く事になった。ウェールズの方はもうかなり寒いから、暖かいコートが必要だって。
「いえ、そんなの…」
「私に贈らせて欲しい」
「でも…」
「どんな寒さの中でも、いつも私の想いがクルミを暖かく包んでいられるように…」
そんな風に言われたら私……断れなくなる。
「ああ…君には淡い色がよく似合う」
彼は私に淡いピンクでファーの付いたコートをプレゼントしてくれた。見えない裏地はピンクと白と赤のチェックですごく可愛い。
「ありがとう……ウィリアム…」
「気に入ったかい?」
「ええ、寒くなるのが楽しみになるくらい」
「よかった…君の笑顔が見られただけで、私はイギリス一の果報者だ」
「大袈裟です…」
「君といられる事以上の至福など…存在しない。私にとって君は……」
じっと見つめられて恥ずかしいのに、碧眼から目を反らせない。人の往来もあるモールの中なのに…。
「私にとって君は……私史上最も愛しい人だ」
「っ」
「もっと傍で同じ時間を過ごし、もっと君を知りたい」
彼の言葉はいつも甘く優しい…期待しないようにしていても、いつの間にか自惚れてしまってる。彼に大事に想われてると確信してる私がいて…。
「クルミ…君が…愛しくてならない」
「ぁ……」
「こうしてエスコートさせてもらえるのは、少なくとも嫌われてはいないと…思ってもいいのか?」
そんな聞き方…狡い…嫌いなわけないのに…。
「嫌っているわけでは…少し…戸惑ってるだけですから…」
「戸惑う…?」
「…はぃ……そんな風に言われた事はないので…慣れなくて」
「ならば慣れなくていい…こうして恥ずかしがる君も…とても可愛らしくていい」
さらっとこんな事が言えちゃうなんて…お国柄の違いかな?この往来のあるモールで平然とそんな風に出来ちゃうんだもん。
「さて…もう少し洋服でも見に行くかい?」
「ええ」
差し出された腕に少し恥ずかしくなりながらも掴まる。ゆっくりと私に合わせて歩いてくれる気遣いが嬉しい。
彼の告白からランチもディナーも私が勝手にぎくしゃくしてただけで、今日はそれが嘘みたいに和やかに楽しく過ごせた。
ランチの後にはシェークスピアのお気に召すままを観た。時折、彼と囁きながら笑ったり…シンデレラの魔法みたいに、夢のような時間を過ごせた。
それも明日一日で終わり…魔法はいつか解けてなくなるものだから…。
部屋に戻ってから、少しずつ片付けを始める。明日は銀行にも行かなきゃ。
スーツケースに一通り荷物を詰めて、ランドリーサービスから戻ったものも確認して詰める。明日一日は一生残るような思い出になればいい…そう願いながら、私はベッドに横になった――。