愛しさを抱きしめて
「一緒に飯食ね?」
チラリと咲羅を見るとヒラヒラと手を振っている。
「ちょっと待ってて」
志乃にそう言って咲羅のところに駆け寄った。
「咲羅!」
驚いたように目を瞬きにする咲羅。
「うち、波音と食べるから!」
わたしを通り抜けていく咲羅。
遠慮してくれたことは知ってるけどさ…話ぐらい…
ショックで声も出ない、とはこのことを言うのだろうか。
わたしは咲羅の行動にただ唖然とするしかなかった。
「とりあえず行くぞ」
志乃はわたしの手首をつかみ、歩き出した。
「非常階段?」
志乃はわたしの手首を離して、非常階段に腰掛けた。
「ここ」
志乃が座っている隣の場所を叩く。
わたしは大人しくそこへ座った。