愛しさを抱きしめて
「日和、志乃と付き合ってるの?」
微笑んで聞いてくる琴音に悪感を感じた。
なんでそんなこと聞くんだろう?とただ純粋とした疑問、しかし琴音がなんも違和感もなく躊躇いもなく志乃のことを呼び捨てにしていた。
まるで志乃のことを呼び慣れていて琴音が志乃のことを全部知ってるみたいだった。
「朝日奈さん、甲斐くんが呼んでる」
琴音は人懐っこい笑顔でクラスの甲斐くんの子ところへ行った。
わたしは琴音の後姿を見ながら自分の胸に不安を仕舞いながら席をたった。
「日和」
わたしの名を呼んだ咲羅が泣きそうな顔でわたしを見ていた。
「どうしたの、咲羅?」
咲羅はわたしの制服の袖を引っ張って波音くんのクラス兼志乃のクラスへ来ていた。
きっと志乃のクラスの男子だろうと思われる人が廊下へ出てきた。
「B組の佐倉さんと宇佐見さんじゃん、誰かに用事?」
わたしは咲羅の後ろに隠れるように咲羅の肩に顔を埋めた。
咲羅は一瞬わたしに目を配り、溜息を吐いた。
「あ~、右京。日和が呼んでるって伝えて」
ニカッと男の子は笑って教室に入っていき、志乃のところまで歩いて行った。
つかの間、その男の子はスヤスヤと気持ちよさそうに机で眠っている志乃の椅子を引いた。咲羅、笑いすぎ…と心の中で突っ込んだ。