愛しさを抱きしめて
「あっ!!いた!」
咲羅の声がして、振り返ると咲羅がこちらに走りよってくる。
笑顔で手を振るわたしの隣にいる、右京くんを見て驚いていた。
「日和っ!!なんで右京なんかと…?」
わたしを守るかのように右京くんから引き離す咲羅を少し悲しかった。
「えっと…会った…?」
会ったと言うより、見つけた?
「右京!!日和に手を出すな!!」
右京くんを睨み付ける咲羅。
「俺が日和のこと気になるだけだ」
右京くんをさらに睨み付ける咲羅。
少し震えているように見えるのは気のせいだろうか?
「日和のことまで誑かすな!!遊び半分に日和に関わるな!!!」
叫んでいる声はすでに涙声。
「一年の頃から日和のこと気になってた」
咲羅はわたしの手首を掴んだ。
「日和、行くよ!!」
そう言って、わたしの荷物を持って走った。
「咲羅??」
その声はやっぱり涙声で、呼びかけても返事が返ってくるはずなかった。