愛しさを抱きしめて

客観SIDE

右京志乃の隣のクラスのD組では、とある会話がされていた。

「本当らしいよ…」
黒い長い髪は彼女の顔を大人っぽく見せる。
朝比奈 琴音(あさひな ことね)。右京志乃の元彼女。

「志乃に彼女?」

眉を寄せて顔を歪める彼女からは志乃のことが好きなのかさえわからない。
廊下に右京志乃と神谷波音が仲良さそうに移動している。
彼女は右京志乃をただ一点と見て、ニヤリと笑って足を駆け出した。

「志乃!あのね、今日暇?」

腕に絡める彼女の身体を彼は、彼女の腕を振り解いた。

「琴音、あの時は謝る。もう俺に関わるな」

それだけ言って彼女を見ずに去って行く彼。
ガリッ…と彼女を歯を噛む。

「何が目的?」

志乃の親友の波音はじっと微笑みながら琴音を見ている。
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