愛しさを抱きしめて

「浮気したのは自分なのに、今更好きとか言われても困ります。尚更、自分が原因なのに別れろって言われる筋はありません」

カァァァァァ…と赤くなる顔、瞬時に冷たくなる身体。
水をかけられた、まぁ夏に近いからいいけど。

「あんたなんか…!!」

パァンと乾いた音、頬に痺れるような痛みが走る。

「なにやってんの?」

志乃の声がする、コツンコツン…と足音が聞こえて冷めきった身体がじんじんと志乃によって温もる。

「美沙、俺の彼女いじめて覚悟できてる?」

あぁ、登場遅いって思って笑ってしまった。
座り込んで震える美沙さん。
普通、ビンタされる瞬間に助けに来てくれるって思ってたのに。
今回だけ許す。俺の彼女って聞いて、胸がホワァンとなった。
志乃の制服が段々濡れてきてるのに、私を抱きしめることをやめないから。

「美沙、次は容赦ないから」

志乃の聞いたことがないような低い声がする。
志乃にタオルを頭に乗せられて、腕を引かれてその場を後にした。
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