愛しさを抱きしめて
「波音くんっ!携帯っっ!」
ようやく携帯が返ってきた時は、既に送信しましたと画面に書いていた。
「元気ねぇ…」
心底感心したように言う咲羅。
「私、知らないからね。波音、後で志乃に絞られたらいいわ」
なんだろう、咲羅の笑顔が黒い。
現に今、波音くんの顔が真っ青、どうしよう。
「咲羅…?何か怒ってる…?」
波音くんは恐る恐る咲羅に聞く。
「別に?」
そう言って教室を出て行った。
心配でとりあえず、波音くんを見ているとショボーンとしていた。
「俺、なんか悪い事したかなぁ…?」
「私、話聞いてくる」
「え…でも…」
きっと“嫉妬”だと思うから。
咲羅は波音くんに自分の醜い所見られたくないと思うから…。
波音くんの言葉を無視して、私は教室を後にした。
咲羅が行きそうな場所って裏庭しかないよね、と思い走った。
裏庭には咲羅はいたけれど、泣いていた。