愛しい人
はっ…と目が覚めた。
寝室の天井が見えて、悪い夢だったと気付いた。

妊婦特有の悪夢…。
妊娠中は、おかしな夢を繰り返し見ることがあるって、何かの本で読んだことがあったけど。


「彩?」


叫びながら起きたのか、久馬くんが心配そうな表情を浮かべていた。


「…こわかった…」


久馬くんの顔を見たら安心して、涙がボロボロと零れた。


そんな私の背中をトントンと叩いてくれた。


「オマエが眠れるまで、こうしてやるから」


「ありがと…」


トントン…と、優しいリズムを感じながら目を閉じていると、悪夢は遥か彼方に消え去って、眠りの世界へと誘われた。


久馬くん…ありがと…。

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