エトワール~君が描く夜空~
ズボンのポケットに手を突っ込んでいた青年は、一度息をつくと夜空を見上げる。



「今日は空が綺麗だね」

「そう……ですね」

「君は、空、好き?」

「……はい」

「そう。ボクも、好きなんだ」



一体、この人は何なんだろう。

フェンスにもたれかかっているため、私が見えるのは彼の後姿だけ。

唯一分かるのは、彼が高身長で髪の色が白っぽいことぐらい。

見知らぬ男性の登場に小首をかしげる私に構わず、彼は優しい口調で続ける。



「ここから見る夜空はいいよね。空が近くて」

「あぁ。確かに」

「月とか星とかさ、手を伸ばせばつかめそうじゃない?」



言葉に笑みを滲ませて、彼はおもむろに手を伸ばすと何かを掴む素振りを見せる。

自分と同じ考えを抱いている人がいたことに驚いて、同時に男の人でもそんなことを思うんだと、何故かとっても微笑ましくて私は思わずクスリと笑みを零した。

彼と同じように夜空に手を伸ばして、私は目を細める。



「そうですね。掴めちゃいそうですね」






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