エトワール~君が描く夜空~
じろりと彼を睨むと、彼は申し訳なさそうに眉を下げて「ごめんね」と再び謝る。



「キミが、今にも飛び降りちゃいそうな気がしたから……」

「別に、私が飛び降りたところであなたには何も関係のないことでしょ?」

「んー……。キミはどうしてそう無理しちゃうのかなぁ……」



呆れたようにため息をつくと、青年は私の髪にポンと手を置く。

驚いて目を丸くする私に、彼は柔らかに微笑む。



「話しならいくらでも聞いてあげる。だから、とりあえず戻ろっか?」

「……あなたに話すことなんて何もない」

「嘘ばっかり。顔にはちゃんと聞いてほしいって書いてあるよ。キミ、分かりやすいんだから無理して嘘つかないの」

「なっ……!」



めっ、とまるで小さな子にするみたいに私の目の前に人差し指をつきだしてわざとらしく怒ったような表情をする彼。

この人……優しそうなのに意外と……。

絶句する私を無理やり引っ張って、フェンスの向こうへと引っ張り上げられ、地面に座るよう促された私は言われるがままに腰掛け彼と向かい合う形になる。



「――で? キミはどうしたの?」

「は?」

「だからー、どうして死のうとなんて思ったの?」



嗚呼、そうだった。

どういや、話し聞いてくれるとか言ってたっけ?

でも……なぁ。

私は両親のことを思いだして、ぐっと眉をひそめる。

……言えるわけ、ない。

頭の中に響き渡る両親の罵声。

目の前に浮かび上がる、私を蔑んだ目で見下ろす両親の幻に私はぐっと目を閉じて耳をふさいだ。



「――ヤダっ!!」

「ちょっ、どうしたのっ!?」

「ヤダ。やめて。お願い。そんな目で私を見ないで……っ!!」

「落ち着いて!」

「……っ」



肩を掴まれて強く揺さぶられ、私はハッと我に返る。







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