「お隣さんで幼馴染は恋の対象になりえますか?」
「お前だから許してやったんだ。お前以外に付けさせねぇよ」
「……」
「イケメン、タラシ、オンナ好き…ってのも本格的に払拭しねぇとなんねぇしな」

更に強く引き寄せると、ほのかは俯いたまま頷いた。

「………お…」

簡単に手早く一括で払拭しようと安易に考えた俺は、ふとまた思い出した…最高の手段を。

「…なぁ、ほのか?」
「なぁに?」

きょとんと見上げるほのかに先に謝る。

「明日、お前に迷惑掛けるかもしんねぇ」
「…な、に?」

赤が急速に色を薄め、白くなる。

「お前が不安になる事は何もねぇよ。それさえ越えりゃ、お前も嫌な思いしなくて済む」
「…うん?」

まだ不安げではあるが、俺の意志が固いのを理解したほのかは素直に頷いた。

「その分、今日は不安になる隙なんてやらねぇから…覚悟、しとけ?」
「と、統一郎っ」

宣言通りに部屋に連れ込んで、真っ先にほのかのお袋さんに電話。
【数学教えるんで、少し遅くなります】





統一郎が何をするつもりかはわかんない。
でも何度も大丈夫だって言ってくれたから…。


とは言え、統一郎は容赦ない…。
体力差も考えてくれないから、私はぐったりしちゃって。
ふわふわしてるうちに一緒にお風呂に入って、髪まで洗ってくれた…のまでは覚えてる。
目が覚めたら朝で…統一郎のパジャマ着せられてて…。

「あら…おはよう、ほのちゃん。お味噌汁零してお風呂借りたんでしょ?ちゃんと制服も洗ってくれて…統一郎君に全部任せてるうちに寝ちゃうなんて」
「ぁ~…」

恥ずかしくて何も言えない。

「あ、あとね?」
「うん?」
「統一郎君から聞いたわよ?付き合い始めたんですって?」
「わぁぁぁっ」
「あらヤダ…照れなくてもいいのよ。よかったわね?」
「………」

恥ずかし過ぎて家にいられないじゃん。
散々茶化されながら、私は迎えに来てくれた統一郎と一緒に登校する。

「朝から真っ赤だな」
「統一郎のせいっ」

「いずれバレるくれぇなら、こっちから先手打つに限る。そうすりゃ動きやすいだろ」
「っ」
「お前だから、俺はちゃんとしておきたいんだ。俺の好きにさせとけ」
「…ぅん」

思い切りがよくて頼り甲斐がある…やっぱり統一郎はカッコいい。

「ほのか…昨日言った覚悟、いいか?」
「ん…よくわかんないけど…統一郎に任せる」
「悪いようにはしねぇ」
「その言い方だといい感じじゃないよι」
「イイ事しかしてねぇ、か?」

含みがありすぎて恥ずかしい事ばっかり言われてるけど、やっぱり好き…だな。


今日は全校集会の後、生徒総会がある。実は統一郎は生徒会長。朝から忙しそうに駆け回ってた。

『では引き続き、生徒総会に移ります』

カンペを読むだけの教頭が舞台の袖から言えば、統一郎が壇上に上がり、真っ直ぐ前を見て口を開いた。

『本日の生徒総会での報告事項は四点です』

やっぱり統一郎はカッコいい。
何度もカッコいいって言い過ぎかな。

『二点目は学園祭クラスイベントについての内容と予算に……』

カンペもないのに、きちんと説明をしている統一郎の姿に見惚れる女子は多い。
そんな中、不意に目が合った気がした。

『三点目、次期生徒会役員が決まりました……』

ううん…気のせいじゃない…見てる、んだ。

『最後、四点目。新役員は来週から始動します。現役員はこの生徒総会を以って解散となりますので、解散ついでに俺から報告とお願いを一つ』

統一郎が笑った…しかも意地悪する時みたいに…何か、嫌な…予感?

『俺は二年の橘ほのかさんと、両親公認で付き合っています』

講堂には悲鳴とどよめきが広がって、私は視線が痛い…嫌な予感、的中!

『そんな彼女に最近、嫌がらせをする生徒がいるようで困っています。残念な事に彼女から聞いた話ではありませんが、この学園内に虐めが行われている事実があります』

これ以上…な、何を言うつもりなんだろ…ι
ああやって笑う時の統一郎は怖いんだ。

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