「お隣さんで幼馴染は恋の対象になりえますか?」
『実はプライベートでも彼女は、この学園の生徒に故意に、服に飲み物を掛けられた事がありました。それは俺も見ています。俺の身近でもこんな事があるなら、学園内にはもっとあるはずです』

今度は同情、されてる?

『解散を前にしての事ですが、次期役員と先生方にはより一層よい学園にする為に尽力頂きたい。全校生徒の皆さんも、荷担している、見掛けた、そう言った事を受けている…そんな状況であればすぐに先生方や新生徒会を頼り……』

熱弁を終えると、講堂は拍手喝采。
やっぱりすごいや…統一郎。カッコイイ。





「すごいね、統一郎」
「あ?あぁ…今朝のか」
「うん」
「私情のみで終わらすわけにはいかねぇし、まぁいい口実んなったな」

お昼休み、中庭でお弁当を食べた後、そんな話をした。

「…ありがと」
「羞恥に耐えて頑張ったカレシ様に何かご褒美はねぇのか?」
「え!?」

ちょ…なにソレ!
カレシ様とかご褒美とかっ!

「全校生徒を前にして、関係ねぇはずの両親公認の付き合いに、勿体なくて晒したくもねぇお前まで、犠牲にして他の男の目に晒しモンにするのに耐えたんだぜ?」
「ぅ」

ほのかは根が素直だからな…押しにも弱ぇ。

「お前と両親公認で付き合ってんのは、周囲だけが知ってりゃ困らねぇ。なのにお前の為に変なあだ名を払拭しようと、俺はすげぇ頑張ったろ?」
「ぅ、うん…」

よくよく聞いてりゃあ、元はと言えば俺が悪いって話なのに、簡単に丸め込まれたほのかは、俺が努力したっつー目先の事にしか理解が及んでねぇ状態だ。

「お前の為だ」
「ぅん」

キスしても怒らねぇ。
敷地内でやるとすげぇ怒る癖にな。

「ほのか」

木の幹に凭れて上に乗るように脚を叩く。

「っ…ぅ~」

正確な判断が全く出来てねぇのか、向かい合うように脚を跨いで座りやがった。
バカ野郎…そこまでしろなんて言ってねぇだろ!
横向きに座ると思ったんだよ、俺はっ!

「…随分、思い切ったな…ほのか?」

落ち着け、俺…まだ大丈夫、大丈夫だ。

「…これで…ご褒美、なる…かな」
「……!?」

恥ずかしい癖に…潤みかけた目でしっかり俺を見返しながら、ふわりとほのかから初めてキス、された。

「……っ」
「と、一郎…?」

何だよ…こんな時に…っ!
ほのかの肩に頭を乗せて誤魔化す。今、顔なんて上げらんねぇ…顔だけじゃなくて…頭の先から脚の先まで全部アツイ。
つか、こんなんカンペキ拷問だろ!

「っ…とーい……」
「…お前が煽ったんだからな、ほのか」
「ひぁ!?」
「責任、とれよ…?」

ほのかは主張し始めた俺に気付いて立ち上がろうとしやがったけど…逃がすかよ。

「と、統一郎」
「ほのか…逃がしゃしね……っ!?」

不意打ちみてぇに両頬をほのかが掌で挟むと、歯がカチ当たりそうな勢いで、またキスされた。

「に…逃げない、から…だから…あの…っ」

あ~もう…何なんだよ…いつの間にそんな顔と強請り方を覚えて来やがったんだ!

「ぁ、あの……ゃ、優しい…のが、いい…」

も~何も言えねぇ…。
つか、ふざけんな。
目ぇ潤ませて、真っ赤んなって、【優しいのがいい】だぁ?
こんな事までされて、よしよしわかった。なんて優しい男の振りが、俺に出来るわけねぇんだよ!

「…統一郎…?嫌?」
「んなモン、嫌に決まってんだろ…莫迦」
「ぁ…ご、ごめ……」
「違ぇ、謝んな…お前相手に手加減なんて出来ねぇんだよ…いい加減、気付け」

知らなさ過ぎるのもほのからしい、な。

「午後はフケちまえよ」
「え!?な、何で…」
「このままじゃ、収まり付かねぇんだよ」
「ぁ」
「な…ほのか?」




すっかり夢中んなって、気付けば六限終了直前。
後からほのかはすげぇ怒った。
中庭はクラブハウスと特別教室棟に挟まれてて、今日は午後の授業て使われる予定がないのを俺は知ってる。
だからって無人かどうかは疑わしいがな。

すっかり臍曲げたほのかのご機嫌取りは骨が折れる。それも正直に我慢の限界だった事や、今日の功績に触れれば、まるでしょげた兎の耳の幻覚すら見えそうな程、落ち込んだ。
校内で…ってのが許せなかったらしい。
これを機にいろいろと俺用の非常対策の仕方でも教えてくとするか。



で、生徒総会以来、ほのかが絡まれたり睨まれたりする事はなくなった。
ってのも、俺が生徒会長じゃなくなって時間に余裕が出来たからだ。
休み時間はほのかのクラスに足を伸ばし、傍離れねぇからな。








Q:お隣りさんで幼馴染は…恋の対象になりえますか?

「ほのかならそうしかならねぇよ。他にどうなれってんだ」
「…アリ、でした」
「は?」
「い、いいの」
「…後でゆっくり聞いてやる」
「その笑顔、チョー怖い」




--end--

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