「お隣さんで幼馴染は恋の対象になりえますか?」
俺…諦められねぇ
Q:自分のせいで別れてしまった初恋の女の子、未だに忘れられません。諦められますか?

「嫌えたら…苦労しねぇよ、莫ぁ迦…」

二年前――雰囲気任せにヤッちまった。ほのかは俺にとっては初恋ってやつで、大事に大事に…そうしてきたのに。
怖い、痛い、ヤダ…そう言って泣くほのかに煽られて、止めてられなかった。最悪なバージンの奪い方しちまった。

「…やっぱ…お前じゃ子供過ぎる…俺には無理だ…バージンも重いしな」

思いもしてねぇ事言って終わらせたのは俺だ。全部俺が悪い。それから何度もほのかは声を掛けてきて、高校も俺を追うように同じトコに来た。なのに俺はほのかをシカトし続けた……。
ほのかはそれから二年ですげぇ綺麗になって…最近化粧を覚えたり服装も変わって、密かに噂されるようにまでなった。
正直、すげぇ焦ってる…俺はほのかと別れてからは、いろんな女と手当たり次第に付き合った。ほのかの為にと…。

すぐに俺に女が群がるようになり、ITOなんて不名誉な事を言われるまでになった。
松岡はクラスが同じで時折ほのからしき女の事を言うのを聞いた。松岡にほのかを会わせたのは浅野。ほのかのツレと付き合っているらしく、特定の男がいないほのかをその女が合コンに連れ出した。

「アイツまた無理とか言いやがる」
「松岡が狙ってる二年だろ?浅野のカノジョの友達とかって」
「美春から聞いて、合コンやったんだ」
「可愛いんだけど、堅ぇんだよな。なかなか二人で会おうとしても時間作ろうとしねぇし。親に嘘付きゃそんだけでイイ思い出来んのによぉ」
「それは松岡だけだろ」

ほのかとヤリたくてしかたねぇらしく、それだけでイライラさせられる。



【子供っぽい私に構ってくれる人なんてレアなんだからっ!化粧して服変えて…そんな事でいいんだったら…わかってたらそのくらいするんだからっ!】

俺の言動がほのかを傷付けた…大事にしてきたほのかを。

【日替わりで女の子連れて歩いて部屋に上げるような統一郎には私の気持ちなんてわかんない!絶対わかんない!大っ嫌い!統一郎なんか大っ嫌い!】

嫌いだとはっきり言われた…なのにほのかの口から【統一郎】と呼ばれた事が嬉しかった。【岸田先輩】と呼ばれると、痛い…全く関係のない扱いのような気にさせられる。
ほのかを遠ざけたのは俺なのに、いざほのかが離れると追いたくなる。どうしても取り戻したい。今なら…遅くなりすぎないうちに…。



何とかほのかと接点を取り戻す為に、俺は事ある毎にほのかに声を掛けた。

「よぉ」

「余ったからやるよ」

「こんなところですっ転ぶんじゃねぇよ」

「貸して見ろ」




「一人で帰るなら送ってやる」

ついに一人で帰ろうとするほのかを見つけ、腕を引いて歩く事が出来た。それまでは何度声を掛けても逆にシカトされ続けた。口も利いてくれねぇのはこんなに痛かったんだな…。
帰り道には付き合ってた頃によく寄った雑貨屋があった。ほのかの視線が店を見る。

「行ってこい」
「…ぁ……」

戸惑うほのかの背中を押してやる。遠慮がちに見上げるほのかは漸く小さく頷いて店に入って行った。俺はゆっくり後を追って入り、小さい口紅を買った。サーモンピンクにパールが入ったものだ。ほのかにはベビーピンクよりずっとよく似合う。
ほのかを店の入り口で待っていると、小走りに出て来た。

「慌てる事ねぇだろ…もういいのか?」
「うん…」
「行くぞ」
「ぁ……」
「どうした?」
「ぁの……ありがと」
「いつもの事だろ」

ほのかの手を取って歩き出した。道中無言でも構わない…またほのかと並んで歩けるんなら――。

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