「お隣さんで幼馴染は恋の対象になりえますか?」
俺…必ず取り戻す
Q:漸く初恋の元カノとデート出来ましたが、邪魔が入った上に元カノは帰ってしまいました。会いに行きましたがシカトされます。さて、どうしますか?

「ゼッテェ会う」

夜中まで粘ってもほのかは顔を出さなかった。
なら明日だ…学校で捕まえる。ほのかにきちんと話して…。

翌朝はいつもより一時間早く出た。

「あら、統一郎くん。今日は早いのね」
「おはようございます」
「おはよう」

ゴミだしに出て来たほのかのお袋さんが、ゴミとは別に袋に入れた白い布…ソレ…まさか。

「ソレは?」
「コレ?ほのちゃんたらね、このワンピース大事にしてたのに、昨日初めて着ただけでココアこぼしたらしくて」

大事に…してたのを?俺と出掛けるのに着た、のか?

「似合わないからもういらないって言い出して。昨日着た時はすごく似合ってたのよ?彼が出来てデートする時に着るって…」
「っ…ソレ…俺が何とかしますから、貸してもらえませんか?」
「構わないけど…私もこっそりクリーニングに出そうと思ってたから」

軽く首を傾げて不審がられてるかもしれないが…それどころじゃねぇよ。

「ほのかには黙ってますから」
「そうね…昨日は泣いてたみたいでね、部屋から出て来なかったのよ?彼氏と何かあったのかしら…」

また…俺が……。

「じゃあコレ借ります」
「お願いね」

大事なほのかをいつも俺が泣かせてる。泣かせたくもないのに…。

昇降口でほのかを待ち伏せた。

「…ほのか、ちょっと来い…」
「っ岸……」
「そんな風に呼ぶなっ」

中庭の木の下で捕まえていた腕を放す。俯いたままのほのかがゆっくり顔を上げると、唇は俺がやった口紅だった。今度こそ…マジで無理かもしんねぇ…。

「統一ろ……昨日…ごめん…」
「ほのかが悪いんじゃねぇだろ」
「でも…ごめん」
「俺が悪ぃんだ…あのワンピースも…」
「いいの!もう…似合わな…」

こんな風に卑屈になるのも俺のせいだ。

「言っただろ、よく似合ってるって」
「…でも…もう、いいの…ありがと、統一郎」

一番に見たのが俺だってだけで…それだけで十分すぎるくらいに可愛いと思えた。

「気付かなくて…ごめんね…二年もしたら統一郎だっていろいろ変わるのに…私、何も訊かないで……」
「変わってねぇ…俺は何も変わってねぇよ!あん時と…何の変わりもなけりゃ進歩もねぇんだ!」

進歩どころか後退しちまってるんだ。何も、何も考えた通りにならねぇ。

「そんな事ない…統一郎、女の子にモテるしいつも違う子と歩くようになった。大人っぽい綺麗な子と……」
「っ」
「私…統一郎の事、よくわかんないけど…」
「ほのか、俺の…」
「お隣さんの幼馴染で妹みたいのでいいから……」
「ほのか……?」

制服のシャツをきゅっと小さな手が握る。その手が小刻みに震えてる…。

「これ以上……無視したり…嫌いになったり、しないでっ」
「っ、ほの…」
「やたら声掛けないし、会いたくないって思われるくらいなら、近付かない…から…っ…」

胸に額を押し当てて、肩を小さく揺らす…何回泣かすんだよ…。

「だから…だからっ…お願…い、統一郎っ……」
「ほのか…」
「っ…ごめん…」

ハッとしたように俺から離れるほのかの目が赤くて、やっぱりまた泣かせたんだと情けない気になる。

「あ…もう私、戻…」
「俺の話は終わってねぇだろ」
「っ…私…」
「聞け、ほのか」

無言で首を振るほのかはまた泣き出して…俺がほのかを泣かせるような事ばかり言ったせいた。

「俺はずっと変わってねぇ…あん時から……お前を子供だなんて一度も思わねぇし、バージンが重いなんて…寧ろラッキーだろ」
「と…い、ちろ…?」
「我慢…してやれなくて…お前がヤダっつって泣いてんのわかってても、どうしても止めてやれなかった。俺もあん時はお前が初めてだった……ほのか泣かさねぇようにするには経験値上げるしかねぇから…手当たり次第付き合った」

俺がほのかを傷付けた言葉は、一字一句違わず覚えてる。忘れられるわけがねぇ。

「結局…またほのか泣かせて、経験値は上がりもしねぇし…俺、サイアク情けねぇ」

実際どんな女でもダメだった。

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