天然王子様に振り回されて
「私・・・羽依です」


そっと、囁くように言った。


その後、真っ直ぐに、おじさんを見つめた。




「志津斎・・・私のお父さんで、間違いありませんよね?」



確認、させて。


私は、今のお父さんの顔さえ、知らないの。





「はい・・・。そうです。」


驚きを隠せないように、おじさん・・・ううん、お父さんは頷いた。







「・・・本当に、羽依なのか?」


私の顔を凝視するお父さん。



私は苦笑を浮かべた。


「そうだよ。お母さんが、高校生なわけないじゃん。」



私の言葉に、お父さんは頷いた。

照れ笑いを浮かべながら。


「そりゃ、そうか。」




あ、可愛い。


ふっとそう思ってしまうほど、お父さんの笑顔は、

柔らかく、人懐っこそうだった。



黒い短髪。

ちょっぴりしわのある口元。

優しそうな黒いたれ目。

大きめの口。

身長は、170cmぐらい。



優しくて、温かそうな男性だと思う。















「――さて、何を注文する?羽依。」


お父さんが、微笑んでメニューを渡してくれた。




「あ、えーっと・・・・・・」


私はペラペラとメニューをめくる。







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