天然王子様に振り回されて
「離婚のきっかけが羽依の名前っていうのは・・・

知ってるかな?」


「うん、知ってる。しょうもない理由だなぁって思うよ?」


「けっこう厳しいな・・・。


まぁ、前々からちょっと鬱憤がたまっててね。

一気に爆発しちゃったんだよ。


それで、結局、離婚して、親権を瑞穂にした。

だから、名前は瑞穂の好きに決めるように言ったんだよ。」



お父さんは、言葉を切って、苦笑をもらした。




「・・・瑞穂は"美羽(ミウ)"という名前を、

私は"莉依(リイ)"という名前を希望してた。


だが、違うだろう?」




私は頷いた。


違う。



私の名前は、美羽でも、莉依でもない。





私の、私の名前は――






「――離婚した後、瑞穂から一通、手紙が届いた。」


お父さんは、私に一枚の便箋を手渡した。



私は、手紙に目を通す。






"ご報告申し上げます。


名前は、お互い考えていたものの最後の漢字を、

くっつけました。


羽依、という名前です。



私からの連絡は、これで最後にします。

連絡先は全て捨てました。


ですから、ご安心してください。



羽依も、私がしっかり育て上げます。



・・・最後に、言わせてください。




愛してます。



瑞穂"






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