天然王子様に振り回されて
私は、読み終えると、手紙を丁寧に2つに折りたたんだ。



そして、切なそうなお父さんを真っ直ぐに見つめて、

苦笑を浮かべた。




「確かに、これはズルイね。」







お母さん。

ズルイよ。


さすがに、ズルイって。



自分が希望していた名前にしないだけでも、ズルイのに。

最後に、"愛してます"なんて。



それなのに、連絡先は全て捨てたって。








「まぁ、元々、未練たらたらだったから。

ノックアウトされてしまってね。


未だに、愛情は長続きしているというわけ。



・・・まぁ、瑞穂は私のことなんて、もう忘れているだろうけど。」




最後に自嘲気に付け加えたお父さんを見ながら、

私は考えた。






いや、忘れてはいないと思う、と。


というか、もしかしなくとも、お母さんも――






そこまで考えて、私はなんだか笑いたくなってしまった。









結局、この2人。


不器用なだけなんじゃない?



そう、思ってしまったから。












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