天然王子様に振り回されて
「・・・・・だって・・・」


羽依のくぐもった声が聞こえた。




「だって、千秋先輩はイケメンだけど・・・

私は、すごい平々凡々女で・・・しかも、背は低いし・・・


つりあってないんですもん!」




くぐもっていたけれど、分かった。


羽依が涙声になってることが。




そっと体を離せば、やっぱり羽依は涙を流していて。





「あ、ありえないって、言われました・・・

私みたいなのと、千秋先輩が付き合ってる、なんて。


ふ、普通はっ!そう、思うんですよっ!」



ポロポロと涙を流しながら。


吐き出すように言う羽依。







「普通って、何?

それ言った奴が異常なだけでしょ。


それに、羽依はさ。

自分をけなしすぎ。


羽依は超可愛いんだから。



それに、俺は羽依がいいの!」


キッパリと言い、そっと羽依の涙を拭ってあげた。




「それで、いいでしょ?羽依。


泣かないでよ。

羽依に泣かれると、俺、困る。


それに、頼って?

図々しくなんてないから。


っつーか、俺は頼ってほしいんだけど?」



羽依はそっと、俺を見上げた。


目が、大きく見開かれていた。








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