その恋、取扱い注意!番外編(旧題 幼なじみは取扱い要注意)
抱き合うふたりは私に気づかないけれど、なぜか一歩下がって身を隠した。

『泣くくらい良い男だったんだ? ミミさんの旦那』

『そうよ! 幸せそうな彼女の笑顔が憎かったし、ふたりの関係を壊してやろうと思ったの』

え……。

耳を疑うアリサさんの言葉だった。寒さよりも、彼女がそんなことを思っていたことに震えてくる。

『あんな冷たい男、見たことないわ! いくら私がモーションかけても全然なびかないんだから! 一目ぼれだったのに!』

怒りをぶつけるような口調。

めまいを覚えて俯くと、手にしていた物が目に入る。彼女のコートとバッグだ。

その時――アリサさんの悲鳴が聞こえた。

『きゃっ!』

彼女の小さな悲鳴にハッとして、ふたりの前に飛び出る。

アリサさんが地面に尻もちをついていた。すぐそばにイーサンが立っているけれど、手を貸そうとはしておらず、彼女を睨みつけている。

『イーサン、ひどいじゃない。突き飛ばすなんて!』

イーサンの脇に下ろした手がかすかに震えている。ぎゅっとこぶしを作った手。
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