トーフマン
すると、信じられないことが起きた。
おれの右腕がひとりでに動き、怪物の手首をつかみ、肘から先を引きちぎったのだ。
「ゲアアアアアアッ!!」
怪物がちぎられた腕をおさえて激しく鳴いた。青い血が、おれの頭に降り注ぐ。生ゴミのような臭いがした。
何がどうなっているのか、さっぱり分からなかった。頭の中が真っ白だ。
引きちぎった怪物の毛だらけの腕が、手の中でわさわさと動いた。
「ひいっ」
とっさにそれを投げ捨てると同時に、我にかえった。そして、あらためて、状況の不条理さに困惑する。
嫌だ。
分からない。
怖い。
理解できない。
怖い。
さっきひとりでに動いた、自分の右腕を見下ろした。
そして、また頭の中が真っ白になった。