トーフマン


背広を着た男の人だった。その人は、地面に落ちると、ぐえっとうめいて気絶した。


少女が目を丸くしてそれを見下ろしていると、周囲からたくさんの悲鳴があがった。
顔をあげて、少女は絶句した。


怪物が、人を襲っていた。


全身毛だらけの、角を生やした人型の怪物が、十体。


長い爪で、通行人を切り裂いていた。血が飛び散った。たくさんの人が、苦しみの声をあげながら倒れていった。
怪物達は、物凄い力で、人々を投げ飛ばした。切り裂いた。地面に叩きつけた。


少女は混乱した。


一体何が起きているのか分からなかった。


やがて、怪物の一体が、こちらに迫ってきた。少女も、横にいた友達も、恐怖で足がすくんでしまい、動けなかった。


怪物が目の前に立った。


そして、長い爪の生えた大きな手を、思いきり振り上げた。


少女は目をつぶった。



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