トーフマン
目覚めると、血まみれだった。
服やズボンが破れていて、おれは半裸になっていた。両手と両足に、乾いた青い血がこびりついていた。
まわりを見回した。
うちの台所だ。ただ、さっき以上に荒れていて、ほとんど廃墟と化していた。天井が裂けている。壁が崩れていて、向こう側の和室が見える。
なんだろう?
あちこちに、肉片のようなものが、たくさんへばりついていた。毛混じりの汚い肉片だ。まるで何かが破裂したかのように、床にも壁にも天井にも、いっぱいくっついている。
何なんだろう?
しばらくの間、ぼんやりとしていた。
どうなってんだ、これ?
すると、低い男の泣き声が聞こえた。
ふりかえると、親父が倒れた冷蔵庫の下敷きになっていた。
おれは駆けよると、冷蔵庫を持ち上げてどけた。冷蔵庫を片手で持ち上げたという自分の異常に気付かずに、おれはしゃがみこんで親父を心配した。
「大丈夫か?」
「すまない・・・・・・、すまない」
涙を流しながら、親父はおれを強く抱きしめた。
「?何泣いてんだよ?」
「すまない・・・・・・、すまない」
妙なことに気がついた。
親父の体が、なんだが少しだけ縮んでいるような気がするのだ。そういえば、台所も少しだけ狭く感じる。
「・・・・・・・・・・・・」
いや、ちがう。
おれの体が大きくなっているのだ。