トーフマン


ああ、かゆい。
かゆい。かゆい。かゆい。
殺さないと、殺さないとかゆみが止まらない。
かゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいっ!!
壊れそうだ。誰か助けてくれ。


そのとき、後ろの方から、ひっと息を呑む声が聞こえた。
振り向くと、少し離れたところにある電柱の下に、浮浪者風の老人がひとり立っていた。おれの姿を見て、怯えた表情を浮かべている。
おれは笑った。


ああ、そうだ。
あれでいい。
あれを殺そう。
そうすれば、かゆみが止まる。


自分の考えに疑問を持たずに、おれは走り出した。老人が、腰を抜かして尻餅をつく。


そのとき、老人の前に、一人の男が立った。


黒いコートに、黒いズボンを身につけた男だった。おそらく、おれと同じくらいの年齢の青年だ。右腕がない。袖がだらりと垂れ下がっている。
「馬鹿野郎が」
その男は、舌打ちをもらしてつぶやいた。


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