トーフマン
やがて人間の形に戻ったおれは、全裸で腰にベルトのみという、イヤーンな格好になった。
「きゃん」
あわてて前を隠す。
「何がきゃんだ。気持ち悪い」
男が吐き捨てるように言った。
「あの、そのコートちょっと貸してくれない?」
「嫌だね。汚い。そこらへんに生えてる木の葉っぱでも使って隠せばいいだろ」
「ひどいっ!・・・・・・・・・・・・っていうか、そもそも、君、誰なの?」
「・・・・・・・・・・・・」
男は、いらただしげにそっぽを向いた。
すると、横から、のんびりとした声が聞こえてきた。
「そいつのことは、ユウ・Uーと呼んでやってください」
声のした方を向くと、メガネをかけたずんぐりとした体型の男が、にこにこしながら、こちらに歩み寄ってきた。四十歳くらいの、中年男性だ。薄汚れた白衣を身につけている。
その男は、どうぞ、と言っておれにジャージの上下をさしだした。
「あ、ありがとう」
礼を言って受けとると、あわててそれを着た。パンツはないので、股がスースーする。
着替え終わると、二人を見て聞いた。
「あの、それで、あなた達は一体?」
メガネの男が答えた。
「私のことは、餅、と呼んでください」
「もち?」
変な名前だ。
「本名ではありません。コードネームです。ワケあって、私達は本名を公開することができないのです」