トーフマン


ところが数日後、六歳になる息子が、研究室に入りこみ、赤い豆腐を食べてしまった。




そう、おれのことだ。




黒いケースがひとりでに開いたという話を聞いて、親父は驚いた。まさか、TF細胞そのものに、そこまで超常的な力が備わっていたとは思わなかった。


TF細胞は、息子に赤い豆腐を食べさせるために、何らかの力で、黒いケースを開けたということになる。




おれに、食べさせるために?




「まさか、TF細胞が、この子を選んだというのか?しかし、よりによってなぜっ?なぜこの子なんだ?」
確か二十一年前のあの時、親父は苦しそうにそう言っていた。




そのあと親父は、以前殺したあのハエの死体をもとにして、TF細胞の活性化を抑える薬を作り出した。そしてその薬を、アレルギーの薬だと偽って、おれに飲ませ続けた。



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