トーフマン


しばらく降りると、明るい部屋に出た。


そこは、何かの実験室のような場所だった。


部屋の中心に大きな作業台があり、フラスコや試験管、顕微鏡、ルーペ、それにまじって、なぜか豆腐の空パックがたくさん散らばっていた。壁際には、計器やメーターのついた、よくわからない大きな機械が置かれていた。


おれは、どきどきしながら、そのひとつひとつを見ていった。なんかかっこいいと思って興奮していた。


その時だ。作業台の上に置かれていた、黒いケースが、ひとりでに開いた。
中から、ドライアイスの白い煙があふれだした。
「これは?」
おれは、ケースの中を覗いた。


そこには、一丁の豆腐が入っていた。


赤い豆腐だった。今までに見たことのない質感、そして、おいしそうな輝きを放っていた。豆腐を食べ慣れているおれでも、食欲を覚えるような、魅力的な甘い香りがした。まるでデザートのようだった。


夕食前で空腹だったおれは、何も考えずに、それを一欠片ちぎると、口にほうりこんだ。


そのとき、体にしびれが走った。


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