生徒会の恋愛事情
でも、あたしの指が動く前に、弥先輩の手は離れていった。
急に何もなくなった手には、弥先輩の温もりだけが残っている。
その温もりを逃がさないように、あたしは自分の左手を握り締めた。
一秒でもいいから、この余韻に浸っていたい。
そんな思いから生まれた微かな抵抗であり、自分の気持ちを隠す術であった。
この気持ちに弥先輩は気付いてないだろう。
弥先輩にとってあたしは、生徒会役員の一人で、恋人の妹で、それ以上でもそれ以下でもない。
だから優しくしてくれてるのかなって思った頃もあった。
でも、きっと違う。
弥先輩は皆に優しいの。
同じ状況に他の女の子と陥っても、弥先輩はさっきと同じ行動を取っていたと思う。
あたしが特別なんじゃない。
でも…それでもあたしは…
消したくても消えない気持ち、諦めてるのに強くなる想い…もがいても仕方ないと思えてきた。
「弥先輩!
ありがとうございました!」
あたしは弥先輩にお礼を言う。
そして同時に、心の中でお願いした。
まだ好きでいさせて下さい。
声にならない叫びは、胸中を巡り、やがて疲労したかのように落ち着いていった。