生徒会の恋愛事情


進まないどころか、あたしはその場にもう一度座り込んでしまった。


弥先輩がこちらへ駆け寄ってくる。


「…怪我をしたのですね。」


声の張り方からして、それは演技のようだった。

でもその表情は演技でない。


本気で心配してくれていた。


「…申し訳ございません…」


「貴女が謝ることはありません。
巻き込んでしまったのは私なんですから。」


そう言って弥先輩は、あたしをそっと抱き締めた。


そして耳元で聞いてきたの。


「足、痛む?」


あたしは小さく頷いた。


「分かった。
あとは僕に任せて。」


弥先輩はそう言うと、観客の方に顔を向ける。


「どうしたらいいのか…怪我をした彼女、もう長くない私…共に逃げるにはどうすれば…」


「貴方様はお屋敷にお戻り下さい!
今ならまだ、皆様に許していただけるでしょう。
それに…私は呪いにかかったようで、もう長くはありません。
私など捨てて下さいませ。」


任せてって言われたのに、余計なことしたかな?


そう思ったが、もう後戻りは出来ない。



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