生徒会の恋愛事情
舞台の後で―弥―
「分かってる。
平井に言うべきだった。」
保健室を出る直前、蛇持先生が僕に言った。
「実際に大変なのは平井だけど、言いたい事がいっぱいあるんでしょ。」
「…ありますよ。」
僕は先生の顔を見ていなかった。
いや、見ていられなかった。
そして何も言わなかった。
「平井は絶対に文句言わない。
寧ろ…先生のおかげで舞台立てましたとか言うと思う。
でも、神崎は違うでしょ。」
「…先生、言ってもどうにもならない事だってあるんです。
それに…終幕直後の貴女の行動は適切でした。
だから…」
「うわー、そんなの可愛くないわ。
大人ぶってるのは結構だけど、そんな鬱憤溜まった仏頂面で戻る気?
今度は保健室で何かあったのかって神崎が心配されるわよ。
ってか本当に可愛くないよ、犬山の兄貴の方がまだ可愛いわ。」
「可愛いって…生徒にそんなの求めますか?」
「保健室の先生は、生徒の健やかな心身を育むことが仕事だから。」
僕は先生の心意が分からなかった。
文句言われたいんだろうか、この人は?
先生は昔からの知り合いで、昔からよく分からない人だけど、今日は余計に分からなかった。