生徒会の恋愛事情

舞台の後で―弥―



「分かってる。
平井に言うべきだった。」


保健室を出る直前、蛇持先生が僕に言った。


「実際に大変なのは平井だけど、言いたい事がいっぱいあるんでしょ。」


「…ありますよ。」


僕は先生の顔を見ていなかった。


いや、見ていられなかった。


そして何も言わなかった。


「平井は絶対に文句言わない。
寧ろ…先生のおかげで舞台立てましたとか言うと思う。
でも、神崎は違うでしょ。」


「…先生、言ってもどうにもならない事だってあるんです。
それに…終幕直後の貴女の行動は適切でした。
だから…」


「うわー、そんなの可愛くないわ。
大人ぶってるのは結構だけど、そんな鬱憤溜まった仏頂面で戻る気?
今度は保健室で何かあったのかって神崎が心配されるわよ。
ってか本当に可愛くないよ、犬山の兄貴の方がまだ可愛いわ。」


「可愛いって…生徒にそんなの求めますか?」


「保健室の先生は、生徒の健やかな心身を育むことが仕事だから。」


僕は先生の心意が分からなかった。


文句言われたいんだろうか、この人は?


先生は昔からの知り合いで、昔からよく分からない人だけど、今日は余計に分からなかった。



< 235 / 385 >

この作品をシェア

pagetop