生徒会の恋愛事情
「…あの時、弥先輩は…キスするフリをしたんです…あたしが皆に言ったように。
舞台の上で事故が起こって、早く収拾するためにしたお芝居。
実際は何もなかった。
唇が当たった気がしたのは、弥先輩の勘違いで、本当に何もなかった。」
「沙羅ちゃん…」
それが一番の方法だ。
誰も傷つかなくていい。
弥先輩も、弥先輩が好きな女の子も…あたしも。
それが一番いいんだ、きっと。
「それでいいですよね?
何もなかったんですから、弥先輩は何も気にする必要ない。
あたしも普通に皆と接したらいい。
まだ勘違いしている人も沢山いるでしょうから、色々聞かれるとは思いますけど、ちゃんと説明したらいいんです。
何もなかった、皆が想像してるような事は何も。
これを真実として言える…その方があたしも楽です。」
「沙羅ちゃんが楽だと言ってくれるなら…」
「では、そういう事で。
…放課後からまたよろしくお願いします。」
あたしはさっきの弥先輩に頭を下げた。
そして顔を上げると、踵を返す。
あたしは生徒会室から出た。
「沙羅ちゃ…」
その時に弥先輩はあたしの名前を呼んだ気がした。
でも…聞こえなかった気もするから、あたしは振り返らずに教室に戻ったのだった。