生徒会の恋愛事情


「お話してただけって…」


「本当にお話してただけだもん!」


絵恋さんが弥先輩のすぐ後ろで言い、あたしと目を合わせる。


お話してただけ。


絵恋さんは…弥先輩が心配だっただけ。


「それなら他人から見て穏やかに話してよ…。
こっちがどれだけ心配したと思っているんだ。
華羅も相当焦ってたし、僕だって…」


言葉を続ける前に、弥先輩は後ろを振り返る。


「絵恋、先に帰っていなさい。」


「弥にぃは?」


「沙羅ちゃんを家に送ってから帰る。」


「…分かった。
その前に一つだけ!」


絵恋さんが弥先輩とあたしの間に立つ。


「沙羅さん、今度はゆっくりお茶しながらお話ししてくださいませんか?
美味しい紅茶を用意しときますから。
あと、来年からあたし、沙羅さんの生徒会の後輩になるんで、よろしくお願いいたします。
それと…」


「絵恋、一つと言ってなかったか?」


「あと一つだけ!
沙羅さん、これから弥にぃと付き合ってたら、何があるか分からないです。
でも、沙羅さんなら絶対に乗り越えられると思います。
もし何か困った事があれば、私も全力で力になりたいと思います。
だから…弥にぃのこと、よろしくお願いいたします。
それでは、今日はありがとうございました。
ごきげんよう。」


絵恋さんはそう言って、ニコッと笑うと、あたしに紙を渡す。


絵恋さんの連絡先だった。


「ありがとう。」


「いえ。
では、私はこれで。」


絵恋さんは先程乗っていた車に乗り込む。


車はすぐに発射し、そこは弥先輩の家の車と、弥先輩とあたしだけになった。



< 298 / 385 >

この作品をシェア

pagetop