生徒会の恋愛事情



あたしの目は大きく見開いた。


それこそ、何の心の準備も出来ていない。


今まで、抱きしめられたり、頭撫でてもらったり、手を繋いだり…これぐらいしかしてこなかったのに。


いきなりハードル高い事言われた。


今まで考えてなかった事、急に考えろと言われているようなそんな気分。


「ダメかな?」


何も言わないあたしを、相変わらず真剣な顔した弥先輩が促す。


「ちゃんと返事聞かせて?」


弥先輩とキス…


思い出したのは、文化祭でのあの時だ。


舞台の上の曖昧な事故…でも今は違う。


あの時は直前に何も考えていなかったけど、それでもあの時よりも更にドキドキしている。


全身の血の巡りを感じる程にドキドキして、そのせいで、何て返事したらいいか真面に考えられない。


だから、あたしは何も言わずに頷いた。


あたしが首を動かすと、一緒に弥先輩の手も少し下がる。


これがあたしの返事だ。


弥先輩が好きすぎて、何も言えないあたしにできる、精一杯の返答だった。



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