生徒会の恋愛事情


あたしは目を見張り、数歩前に出た。


向こうに見た事のある人がいるのだ。


「お母さん?」


動揺したあたしは、今貰ったばかりのジュースを飲みほし、スタッフにグラスを返す。


そしてまた人混みをくぐり抜ける。


その間もあたしは彼女を見逃さなかった。


だが…


彼女の周りを知らない大人が囲う。


そして何か話した後、すぐに会場の出口の方に歩いていく。


「待って!」


あたしは咄嗟にそう言った。


その瞬間、彼女が一瞬歩みを止めた。


だがすぐにまた歩き始める。


今度は早足だった。


沢山人がいるせいで、思うように進めないあたしと彼女の距離は開く一方だった。


彼女が会場を出たのを見て、精一杯急いで会場を出た。


だがもう彼女の姿はなかった。



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