生徒会の恋愛事情
小金井さんのお宅に着くまで、特に会話らしい会話はなかった。
ただじっと時を過ぎるのを待つ時間は、弥先輩のお家の車に乗せてもらう時とはまた別の感覚だった。
強いて言うなら、初めて絵恋ちゃんに会った時と似ている。
でもあの時とは違うのは、華羅お姉ちゃんがいること。
一人じゃない心強さが今のあたしを支えているのだ。
冬独特の静まった空気の中を、暖房から吹く風が、進んでは止まりを繰り返している。
おかげで用済みになったカイロが、鞄の中で心臓のような熱をもて余していた。
小金井さんに言われて車を下りると、そこは天にも届きそうなマンションが聳え立っていた。
あたしも華羅お姉ちゃんも、思わずその高さに驚く。
しかし、ここにいつも来ているであろう小金井さんはスタスタとマンションの中に入っていく。
あたし達はその後をついて歩くと、エレベーターに乗り、最上階を目指した。
最上階に着くと、エレベーターはゆっくりと扉を開き、あたし達に別世界を見せる。
ホテルのような絨毯が敷いてある廊下を進むとすぐに、重厚なドアが目に入る。
小金井さんはさも当然のようにそのドアの鍵を開けた。
カチャッという乾いた音と共にあたし達は中へ案内された。
弥先輩の豪邸を経験しているせいか、中でそんなに驚く事はなかったけど、掃除が行き届き、細かなそうしょくな美しい家具が並ぶそこは、間違いなく勝者の住まいであった。
あたし達がソファに座るや否や、お手伝いさんがワゴンに紅茶とお菓子を持ってやって来た。
「さあそんに堅くならずに。
今日は貴女方に学校でのお話を聞かせてほしいのだよ。」
そう言った小金井さんの顔は、何を考えているのか分からない穏やかな顔をしていた。