生徒会の恋愛事情


そのまま3月に突入した。


年度末は忙しいとはよく言うものだが、それは生徒会も例外ではなく、ましてや社会人の由羅お姉ちゃんは尚更の事で、由羅お姉ちゃんは最近遅く帰る事が多くなった。


今日も例外ではなく、華羅お姉ちゃんが見回りから帰ってきても家族全員揃わない。


「そういえば、お姉ちゃん達に言わないといけない事があるんだけど、今日久しぶりに例の高級車見たよ。
相変わらず真っ黒で大きいやつ。」


美羅の発言にあたしも華羅お姉ちゃんも顔を上げる。


「確かに10日ぶりに聞いた。
今日も止まってただけ?」


「うーんと、正しくは発進しているところを見た。
本当に、動き出した瞬間って感じ。
美羅が帰ってきて、慌てたのかな?
よく分からないけど。」


美羅に気付いて帰ったのは少しおかしい気がした。


何回も来ているなら、一番早くに美羅が帰ってくるのは知っているはずだ。


もし娘の姿を一目見ようと思うなら、美羅が家に入る瞬間を見守ってから帰りそうなものだ。


もしかしたらお母さんじゃない誰かなのだろうか。


でもそうだとしたら誰なの…


疑念を抱えたまま、食事の支度をする。


華羅お姉ちゃんも帰ってきたし、3人で食卓を囲む。


いつもよりも少しだけ広く使える食卓は、大きめの鍋を置くには丁度良いが、なんだか寂しかった。


強い風がアパートの壁を打ち付ける音が、まだ冬が終わってない事を強調する。


隙間風が足元に送るひんやりとした風に嫌気が差した頃、家のドアからノックの音が聞こえた。



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