生徒会の恋愛事情
そしたら急に笑顔が消えた。
きょとんとしてしまったあたしの斜め前に弥先輩が立つ。
笑顔が消えた小金井さんは、真剣にあたし達を見比べる。
「弥君、今回の事はとても感謝しているよ。
咲羅さんに笑顔が増えたのは君のおかげだ。
ありがとう。
ライバル起業の御曹司に借りは作りたくなかったが…何か望む事はあるかな?」
「そうですね…華羅を無事に家に送り届けてあげて下さい。」
「…社長に似ているな。
分かった。
必ず送り届けるよ。
あと、これはお節介かもしれないが…弥君、もし生涯愛する事が出来ると確信し、相手の方も応じてくれた場合、その方はとても苦労するだろう。
神崎の御曹司だ。
君もそれぐらい想像出来るだろう。
その時君は、どうやって愛する人を守る?」
「それは…」
弥先輩が苦い顔をする。
弥先輩が人の質問に答えられないなんて珍しい。
「まだ二十歳にもなっていない青二才には分からないだろう。
偉くなる事だよ。
立場もそうだが、君の場合、立場は既に十分に偉い。
中身の問題だ。
何かあった時に相手に一言注意するだけで、言う事を聞かせられるようになる事と、悪い事以外何をしても許させる人間になる事、この2つが重要だ。
君は心根の悪い人間ではないし、有能だから、後者への素質は持っている。
だが、若いから当たり前なのだが、君には威厳が足りない。
雰囲気が優しすぎる。
今は良くても、今後そのままだと困るぞ。」
「…ご教示、恐れ入ります。」
小金井さんは頷き、次はあたしの目を見る。
表情は何一つ変わらない。