生徒会の恋愛事情
「さっき小金井さんが言ってくれた事。
沙羅ちゃんとお付き合いさせてもらってから、沙羅ちゃんが好きって気持ちだけでいっぱいになっていた。
でも、一応立場ってものもあるの分かっていたから、沙羅ちゃんを守らなきゃって思いはあったものの、先の事を深く考えていなかったと思って。
絵恋が初めて沙羅ちゃんの前に現れた時にも思ったけど、僕が沙羅ちゃんを守らないといけないのに、結局は後手に回ってしまった。
先の事を考えて行動出来ていなかったのが裏目に出たと思って。
あの時は相手が絵恋だったから何事もなかったけど、違っていたらと思うと、今でも怖いんだ。」
弥先輩があたしの手を握り、そのまま片方の腕を背中に回す。
また距離が縮まって、またドキドキする。
でも今、弥先輩は大事な話をしている。
きちんと聞かないといけない、あたしは頭を懸命に動かして、次の言葉を待った。
「沙羅ちゃんもそうだろうけど、僕もこの先の事なんて分からない。
一緒にいれない時間の方が圧倒的に多い中で、沙羅ちゃんにいつ何が起きるか分からない中で、どうやって沙羅ちゃんを守ればいいかも分かってないんだ。
情けないけど、これが今の僕なんだ。
でも小金井さんがヒントをくれた。
それでこれから、どうやって振る舞うべきか考えていたんだ。」
弥先輩、そんな風に考えていてくれたんだ。
心の奥底から、温かい感動が溢れてくる。
あたしも片方の腕を弥先輩の背中に回した。
「威厳とか難しい事はあたしには分からないです。
でも、あたしは今の弥先輩が好きですよ。
それに、将来弥先輩が少し怖い感じになったとしても、好きです。
本当は優しくて、そうやってあたしのために一生懸命考えてくれる人だって知ってますから。
でも…まだ高校生なんです。
そりゃ聖也先輩みたいに、高校生にして風格がある人もいますけど、もう少し今の弥先輩のままでいてほしいです。
生徒会のためにも、あたしのためにも、弥先輩のためにも、暫くは今の弥先輩でいてください。
危ない事は、あたしも回避するように努めますから。」
あたし、弥先輩にこんなに考えてもらえて、幸せ者だと思う。
その事を嬉しくも思う。